2015-01-01から1年間の記事一覧

戸村先生の涙

NNNドキュメント‘06「子供たちの心が見えない~教師17年目の苦悩~」(2006年7月30日NTV放送)で紹介された、小学校6年生の学級崩壊について考察をする。 私がこの事例に関心を持った理由は3つある。ひとつは、学級経営の難しさを教えてくれたから。ひとつは、…

12人のカウンセラーが語る12の物語(6)

事例小説 フロイトは、初期の著作である『ヒステリー研究』(1895)の中で次のように述べている。 私は、これまでずっと精神療法だけに携わってきたわけではない。他の精神病理学者と同じく、私も局所診断や電気予後診断学の教育を受けてきた。にもかかわらず…

12人のカウンセラーが語る12の物語(5)

いのちのバトン 大学の学生相談室では、基本的にひとりの学生に対して同じカウンセラーが継続してカウンセリングを行うが、カウンセラーの人事移動によって担当を継続できなくなることがある。半年間の休学の末に今年度二度目の四年生となった彼女も、担当の…

12人のカウンセラーが語る12の物語(4)

デクノボウの住みか 幼い頃から、母親に育児放棄され、学校にも行かなかったマリコ。彼女は、幻覚や幻聴などを日常的に体験し、錯乱状態で病院に運ばれてきた。彼女のカウンセリングを、伊藤さんが担当することになった。 マリコにとって、入院は人生で初め…

12人のカウンセラーが語る12の物語(3)

窓 「先生は私を見捨てました」 大学に入って、勉強に専念するあまり、睡眠をほとんどとらず、過密なスケジュールを組んだ彼。ある日、同級生に勉強ができなくなる魔法をかけられたと彼は言った。母親に病院に連れてこられて混乱している彼を、山本さんは辛…

12人のカウンセラーが語る12の物語(2)

生きのびるための死 「研究室の指導教授との人間関係がうまくいかない」 理学部三年の彼は、そのような悩みを持ち、カウンセラーの高石さんのもとを訪れた。彼は、カウンセリングを通して、この世界の他者との断絶(ひいては、高石さんとの断絶)を語り、次…

12人のカウンセラーが語る12の物語(1)

このブログの「単一原理段階のカウンセラー」という記事を読んでくださった臨床心理士の先生から、この本を読んでみるといいよ、と言っていただいて、杉原保史さんと高石恭子さんの著作『12人のカウンセラーが語る12の物語』(ミネルヴァ書房, 2010)を貸し…

諦めないことと決め付けないことの同値性

久々の雨。台風が来たかのように打ちつける。窓の外の騒がしさを、静かな部屋の小さな窓からうかがう。窓際で憂鬱になって、外に出たくないなぁと少しの間だけぼうっとした。 昨晩は、色々考え事をして遅くまで起きていたけれど、いつの間にか眠りについてい…

単一原理段階のカウンセラー

臨床心理士の先生が講師をしてくださって、傾聴についての勉強会をしました。 傾聴ってなんだろう。まず、そこが私の一番の疑問だったのですが、なんとなく傾聴ってこんなものなのかな、みたいなのが見えてきた気がします。 勉強会の前半では、河合隼雄さん…

弱くあることと休学のすすめ

キャンパス内の池のベンチに寝転がって、空を見上げる。こもれびが暖かい。池の中で、亀がゆっくり泳いでいく。耳をすます。滝の水が流れる音、風に木の葉がそよぐ音、鳥のさえずり、グラウンドの勇ましい声。ここが東京の真ん中であることを忘れそうになる…

思い出

金曜日の深夜2時頃に、ドライブをしないかと電話をいただいて、知り合いの車に乗っていると、思わずながら群馬県に来ていました。車の後部座席で目が覚めた時に、窓の外を見やると、それはそれは美しい朝日と、どこか見覚えのある風景が広がっていて、いつ見…

学生同士の支えあい

先日、いくつかの研修を終え、現在通っている大学の正規ピアサポーターとして認定をしていただきました。ピアサポートというのは、同等な立場の者(ピア)同士が、互いに支援(サポート)をし合う、という活動です。海外には、ピアサポート活動を行っている…

君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか。中学生や高校生に向けて、その問いを発し続けている本があります。吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波文庫, 1982)です。この本は、1930年代に、少年少女に倫理を教えるために執筆されたのですが、読みやすい物語調と深いメッ…

小さな刃

何かしらをするかしまいかの選択をする際、それぞれの選択肢に対してどのような結果を得るかを事前に知ることは難しい。結果を知ってから、ああしてよかった、こっちにしとけばよかった、などと思うことができる。だから、選択をする際、できるだけ自分の選…

学校の壁の残骸を拾う

「新しい学力観」や「生きる力」という言葉が頻繁に聞かれるような時代であるが、教育改革について議論する前に、日本社会における高等学校というものの役割がどのように変容してきたかということを、少し振り返ってみようと思う。 学校の壁の残骸を拾う ま…

人生最良アルゴリズム

以下の問題文を読み、問いを考えてみてください。皆さんは、どのような答えを考え出すでしょうか? ちなみに、背景として、コンパイラやインタプリタを作るときに用いるような、プログラミングの変数環境を想像しました。もちろん、プログラミングをまったく…

「他人からの評価」と「報われない努力」

「合格鉛筆」見たことありますか? 私は小学生のときにそろばんを習い始めたのですが、検定試験に合格して昇級・昇段する度に、珠算教室の先生から合格鉛筆を1本だけもらっていました。合格鉛筆をもらえた瞬間は、それはそれは嬉しくて、これからもっと頑張…